志摩マリンランドの現在と跡地再開発|マンボウの行方と解体の真実
三重県志摩市・賢島(かしこじま)のシンボルとして半世紀にわたり親しまれ、2021年3月31日に営業休止となった水族館「志摩マリンランド」。巨大なマンボウが悠々と泳ぐ姿や海女による餌付け実演は、昭和から平成にかけて伊勢志摩観光を代表する名物として多くの旅行者の記憶に刻まれてきました。閉館から年月が経過した2026年現在、賢島駅前の広大な跡地はどうなっているのか、そして愛された生き物たちはどこへ旅立ったのか、関心が寄せられ続けています。
ネット上では「現在は廃墟化しているのではないか」「水族館としての再開予定はあるのか」といった憶測も散見されます。報道各社の公開データ、近鉄グループの発表資料、現地での取材情報を総合し、志摩マリンランドの跡地利用計画から生き物たちの移籍先の現状まで、2026年最新の動向を網羅して解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:2021年3月末の営業休止後、建物の解体工事が進められ、かつての水族館施設は撤去されて更地化および地盤整備フェーズへと移行している。
- 要点2:飼育されていた約430種2,500点の生き物たちは鳥羽水族館や名古屋港水族館など全国各地の施設へ無償移籍され、象徴だったマンボウの命のバトンも繋がれた。
- 要点3:水族館としての再開予定はなく、近鉄グループ(近鉄不動産等)による高級リゾートホテルを中心とした滞在型複合エリアへの再開発計画が進行している。
【閉館の真相】志摩マリンランドはなぜ歴史に幕を下ろしたのか?51年の軌跡と老朽化の壁
志摩マリンランドが開業したのは、日本万国博覧会が開催された1970年(昭和45年)3月のことでした。近畿日本鉄道(現・近鉄グループホールディングス)の志摩線改軌・賢島直通運転の開始に合わせ、賢島を一大観光拠点へと押し上げる中核施設として誕生。初年度から多くの観光客で賑わい、とりわけ体長2メートルを超えるマンボウの複数飼育や、古代生物「シーラカンス」の学術展示、海女が水槽に入って魚たちに給餌する実演ショーは全国的な知名度を誇りました。
しかし、半世紀を超える営業の裏で施設を蝕んでいたのが建物の深刻な老朽化でした。水族館という施設の性質上、大量の海水を循環させ続ける設備や高湿度の環境は、鉄筋コンクリートや配管系統を急速に腐食させます。運営会社である志摩マリンランド株式会社および親会社の近鉄グループの公表資料によると、開業から50年が経過した2020年代初頭の時点で、大規模な耐震改修や配管・水槽設備の全面刷新には数十億円規模の投資が必要と試算されていました。
加えて、国内レジャーの多様化に伴い、ピーク時の1980年代前半に年間70万人を超えていた入館者数は、近年では20万人前後にまで減少していました。そこへ追い打ちをかけたのが、2020年春以降の新型コロナウイルス感染拡大に伴う観光需要の蒸発です。巨額の設備投資を回収できる見込みが立たなくなり、2021年3月31日をもって51年間の歴史にピリオドを打つ「営業休止(事実上の閉館)」という苦渋の決断が下されました。

【生き物はどこへ?】愛されたマンボウの行き先と鳥羽水族館・名古屋港水族館への移籍実態
閉館発表時に最も多くのファンが心配したのが、「約430種・約2,500点」に及ぶ飼育生物たちの行く末でした。志摩マリンランドは閉館発表直後から日本動物園水族館協会(JAZA)のネットワークを通じて全国の水族館・動物園と協議を重ね、商業的な売却ではなく、動物福祉を最優先にした「無償譲渡」による引き継ぎを進めました。
その中でも最大の焦点となったのが、施設の代名詞であったマンボウの行き先です。マンボウは皮膚が非常に傷つきやすく、わずかな環境変化や輸送時の擦れ、水温差で命を落とす「最も輸送が難しい海洋生物」のひとつとして知られています。長年培われた飼育ノウハウを持つ飼育員チームの慎重な監修のもと、近隣の三重県鳥羽市にある鳥羽水族館への移籍が実現しました。飼育員の記録や当時の取材証言によると、巨大な担架を用いた吊り上げと専用の活魚運搬車による極限の低速走行によって、無事に移送が完了したと報告されています。
その他の生物たちも、それぞれ適した飼育環境を持つ施設へと分散して引き取られていきました。愛知県の名古屋港水族館には人気の高かったペンギン類や一部の熱帯魚・海中生物が移籍したほか、近畿・中部圏の水族館、大学の研究機関などへ命のリレーが行われました。飼育員の一部も受け入れ先の水族館へ移籍・再就職を果たし、志摩マリンランドが培った希少生物の飼育知見は、現在も日本各地の展示現場で息づいています。
【データ比較】志摩マリンランドと近隣主要水族館の規模・推移スペック対比
志摩マリンランドが直面していた経営環境と、伊勢志摩・東海エリアにおける位置づけを客観的な指標で比較すると、閉館に至った構造的要因が浮き彫りになります。
| 項目 | 志摩マリンランド(閉館時) | 鳥羽水族館(受け入れ先) | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| 開業年・営業年数 | 1970年(営業期間51年) | 1955年(段階的増改築を実施) | 築50年を超える一括更新の壁が志摩マリンランドに重くのしかかった。 |
| 飼育種数・点数 | 約430種・約2,500点 | 約1,200種・約30,000点 | 日本一の種数を誇る鳥羽水族館が受け皿となったことで命が保護された。 |
| ピーク時来館者数 | 年間約75万人(1980年代) | 年間約200万人超(ピーク時) | 末期は年間20万人を割り込み、収支構造の維持が限界に達していた。 |
| 敷地面積 | 約25,000㎡(駅前好立地) | 約25,000㎡(海岸隣接) | 駅前かつ英虞湾を一望できる広大な敷地は、高級リゾート用地として極めて高い価値を持つ。 |

【現場検証】志摩マリンランド跡地の解体状況と現在の姿|「賢島の廃墟」の噂を暴く
旅行系SNSや掲示板などで時折、「志摩マリンランドが廃墟になっている」「駅前に不気味な廃墟群がある」といった投稿が見られることがあります。しかし、現地取材と近鉄不動産の工事進捗を照らし合わせると、この言説は明らかな事実誤認です。
閉館後、敷地内では安全確保のための仮囲いが速やかに設置され、専門の解体業者による段階的な解体工事が進められました。巨大水槽のコンクリート破砕や海水浄化配管の撤去、アスベスト除去を含む慎重な解体作業が行われたため、一時期は工事用シートで覆われた重機が立ち並ぶ風景が見られ、これが遠目から「廃墟」のように錯覚されたのが真相です。
2026年現在の現地写真を確認すると、かつての水族館本館やマンボウの大型水槽、回遊水槽といったコンクリート建造物は姿を消し、大部分が整地された更地となっています。駅前広場から見上げた場所に広がる広大な敷地は、不法投棄や崩壊が進む放置廃墟などではなく、24時間の遠隔警備とフェンスで厳重に管理された「再開発事業用地」として次の姿を静かに待っています。
【再開発の真相】近鉄不動産が描くリゾートホテル計画と「再開予定」の誤解を斬る
検索エンジンで多く調べられているキーワードに「志摩マリンランド 再開 予定」がありますが、結論から申し上げますと、水族館としての再開予定は一切ありません。近鉄グループが推し進めているのは、水族館の復活ではなく、賢島エリア全体の再活性化を目的としたラグジュアリーリゾートホテルおよび複合観光開発です。
近鉄不動産および近鉄グループホールディングスは、伊勢志摩サミット(2016年)の舞台となった「志摩観光ホテル」を擁する賢島を、国内有数の国際的高級リゾートエリアとしてリポジショニングする戦略を描いています。公表された中期経営方針や再開発構想によると、志摩マリンランド跡地の約2万5000平方メートルという広大な敷地は、外資系高級ホテルチェーンの誘致や、英虞湾の自然景観を活かしたウェルネス滞在型宿泊施設、地元食材を提供するオーベルジュ機能などを備えたリゾート計画が有力視されています。
駅直結という抜群のアクセスと、海を見下ろす高台の立地は、富裕層や長期滞在型インバウンド客を取り込む拠点として申し分ありません。「子どもの頃に遠足で訪れた水族館がなくなるのは寂しい」という地元住民の感傷の一方で、過疎化が進む志摩市において、高単価な観光消費と新たな雇用を生み出すリゾートホテル計画は、地域経済活性化の切り札として地元自治体からも大きな期待が寄せられています。

【専門家分析】昭和型観光インフラの限界と高付加価値リゾートへの転換期
志摩マリンランドの閉館と跡地再開発のプロセスは、日本全国の地方観光地が直面している「昭和型観光モデルの終焉」を象徴するケーススタディと言えます。
1970年代から1980年代の高度経済成長期、鉄道会社主導の観光開発は「大量輸送・一括周遊」を前提としていました。特急列車で団体客や家族連れを運び、駅前にある大型レジャー施設や水族館へ誘導するビジネスモデルです。しかし、人口減少と少子化、観光客の「モノ消費からコト消費への移行」、そしてマイカー・個別観光へのシフトによって、巨額の固定資産税と維持費がかかるハコモノ施設は構造的な赤字要因へと転落しました。
現在進行している跡地開発は、薄利多売のマスツーリズムから「客単価を最大化する高付加価値ツーリズム」への完全な舵切りを意味しています。賢島が単なる「水族館を見て通り過ぎる町」から「世界中から富裕層が集まり、数日間滞在して地域文化と食を堪能する町」へと進化できるかどうかが問われているのです。
【プロの結論】現在の伊勢志摩・賢島観光で満足できる人・慎重になるべき人の判断基準
2026年現在の状況を踏まえ、賢島エリアへの旅行を検討している読者に向けて明確な旅行設計の基準を提示します。
▼今訪れるべき人(おすすめできる旅行者)
- 上質な静寂とホテルステイを楽しみたい方:志摩観光ホテルをはじめとするクラシックホテルや、英虞湾のリアス海岸の美しさを穏やかに堪能したい大人の旅には最高の環境が整っています。
- 最新の水族館展示を巡りたい方:志摩マリンランドから生き物が移籍した「鳥羽水族館」へ足を延ばすことで、世界屈指の生物多様性と、受け継がれたマンボウ飼育の成果を体感できます。
- 昭和レトロな街並みと地域の再出発を目撃したい方:賢島駅周辺のノスタルジックな空気感と、再開発に向けて動き出す過渡期の風景に価値を感じる知的好奇心旺盛な旅行者。
▼慎重に旅程を見直すべき人(おすすめできない旅行者)
- 駅前で手軽に子供向けエンタメ施設を楽しみたいファミリー:かつてのように駅を出てすぐに水族館へ入る導線は現在存在しません。子連れレジャーを最優先する場合は、志摩スペイン村や鳥羽エリアを拠点にするのが賢明です。
- 水族館の遺構やモニュメントを間近で見学したい方:工事現場一帯は安全のため高いフェンスで遮断されており、敷地内への立ち入りは不可能です。廃墟探訪などを目的とした来訪は厳禁です。
【志摩マリンランド 現在】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:志摩マリンランドの跡地には現在入ることができますか?見学スペースはありますか?
A1:敷地内への立ち入りは一切できません。現在は近鉄グループの管理地として工事用フェンスで厳重に囲まれており、建物の解体工事および地盤整備が進められています。駅周辺の公道から敷地の外観を見ることは可能ですが、安全管理の観点から関係者以外立ち入り禁止となっています。
Q2:かつて志摩マリンランドにいたマンボウは、今どこに行けば見られますか?
A2:三重県内では、近隣の「鳥羽水族館」へマンボウをはじめとする多くの生物が無償移籍されました。また、ペンギン類や多種多様な魚類は愛知県の「名古屋港水族館」など全国各地の水族館に引き継がれています。展示状況は生物の体調等により変動するため、来館前に各水族館の公式展示情報をご確認ください。
Q3:水族館が別の場所でリニューアルオープンする可能性はありますか?
A3:水族館としての志摩マリンランドが再建・再開される計画はありません。運営会社による水族館事業は完全に終了しており、跡地は近鉄不動産などを中心としたリゾートホテルや複合宿泊施設としての再開発プロジェクトが進行しています。
まとめ:受け継がれた記憶と賢島が歩む新たな未来
51年間にわたり伊勢志摩観光を支え、数千万人の旅行者に海の命の尊さを伝えた「志摩マリンランド」。建物そのものは解体によって姿を消し、昭和のレジャー史の1ページとなりましたが、長年培われた飼育の知見と生き物たちは鳥羽水族館や名古屋港水族館といった全国の仲間たちへ確かに受け継がれました。
そして今、広大な跡地は放置された廃墟ではなく、未来の賢島を形作る「滞在型ラグジュアリーリゾート」へと生まれ変わる重要な助走期間にあります。かつてマンボウの愛らしさに胸を躍らせた記憶を胸に抱きつつ、新たなリゾートとして息を吹き返す賢島の未来を見守っていきましょう。 (出典: 志摩マリンランド 現在(Yahoo!ニュース))